ASEAN諸国の経済を比較コロナ禍における影響は?

ASEAN諸国の経済を比較
コロナ禍における影響は?

東南アジア諸国連合(ASEAN)は現在10カ国が加盟している地域協力機構です。それぞれの国は面積や人口はもちろん、言語、政治や経済体制、宗教など、あらゆる面で大きく異なります。本記事ではASEAN全体の概略と主要6カ国の特徴、またコロナ禍での各国の経済状況について解説します。

ASEAN概況

1967年8月にバンコクで発足したASEANは、以下10カ国の加盟国で構成されています。

【ASEAN加盟国】

インドネシア、シンガポール、タイ、マレーシア、フィリピン、ベトナム、カンボジア、ブルネイ、ミャンマー、ラオス

・総面積:449万k㎡・・・ 日本の11.9倍、世界の3.3%

・人口:6億6,062万人・・・ 日本の5.2倍、世界の8.6%

・GDP:3兆1,731億米ドル・・・ 日本の62%、世界の3.6%

・1人当たりGDP:4,803米ドル ・・・日本の11.9%、世界平均の42%

・貿易(輸出+輸入):2兆6,625億米ドル・・・ 日本の1.9倍、世界の7.3%

参照:ASEAN経済統計基礎資料

ちなみに、日本は東アジアに属するため加盟していません。また、アジアで最も若い国である東ティモールの加盟は検討中とされています。ASEANでは加盟国が持ち回りで議長国を務め、年間300以上の会議を開催。ASEANに加盟することは東南アジアの小国がASEANとして一体となることで国際社会に対して一定の影響力を持てるという点に意義があります。

コロナ禍におけるASEAN主要6カ国のGDP成長率

(出典 NIKKEI ASIA ※2021は予測値)

ASEAN主要6カ国(ベトナム、インドネシア、シンガポール、マレーシア、フィリピン、タイ)の2020年第2四半期における実質GDP成長率は、各国統計を参照すると、新型コロナ感染拡大の影響を受け、ほとんどの国がマイナス成長となっています。

各国の前年同期比は、マレーシアがマイナス17.1%、フィリピンはマイナス16.5%、シンガポールはマイナス13.2%、タイはマイナス12.2%、インドネシアはマイナス5.3%でした。一方、ベトナムのみが0.4%とプラス成長を示しています。

第4四半期のGDP成長率では、ベトナムは前年同期比4.5%と第3四半期の2.7%から加速度的に増え、2020年通年のGDP成長率も、他5カ国がマイナスを示している中で、ベトナムは2.9%とプラス成長となりました。

このベトナムの経済成長の背景には、市場経済化を進め、投資環境を整えることで外資を呼び込み、輸出を拡大させたことが挙げられます。また、ASEANの各国が中国経済減速の影響を受け、中国向けの輸出が減少したことで経済成長が停滞している中で、ベトナムは比較的中国向け輸出が少なく、米国向け輸出の割合が多いことも要因のひとつといえます。さらに、新型コロナウイルスの感染拡大抑制において初期段階で迅速な水際対策を行い、ベトナム国内での拡大抑制を成功させたことも話題となりました。

ベトナムにおける新型コロナウイルス感染者数推移

(出典:REUTERS COVID-19 TRACKER  ※2021年6月17日時点)

ただ、2021年5月上旬から6月にかけて、ベトナムにおける1日あたりの新型コロナウイルス感染者数は急増しており、6月17日の時点で新規感染者数が304件と1日あたりの感染者数の平均がピークに達しました。ベトナムでは新型ウイルスによる感染者はパンデミック開始以降、合計で11,635人、死者が61人と報告されています。日本と比べ感染者数と死者数は少ないものの、変異株の拡大など予断を許さない状況のため、今後の感染状況と経済状況は注視が必要です。

ASEAN 主要 6ヵ国の特徴

次に、主要6カ国の主な特徴を見ておきましょう。

シンガポール

ASEAN地域の経済を牽引するシンガポール。面積は東京23区ほどですが、ガーデンシティと呼ばれる緑豊かな美しい国であり、近代的な街並みも魅力です。中国、インド、マレーなどの多様な文化、言語、宗教が存在することも特徴です。治安や衛生環境が良いため移住先としても人気があり、移民比率が43%と世界199カ国中12位となっています。また、2015年時点での平均年齢が40歳とASEANの中では一番平均年齢が高い点も抑えておきたいポイントです。

タイ

仏教国タイは、植民地支配を受けることなく独自の文化を育んできました。ASEAN加盟国の中でも屈指の観光地であり、世界遺産のアユタヤ、ビーチリゾート“プーケット”などの観光資源が豊富です。日本とタイの皇室・王室間の友好的な関係をもとに、政治、経済、文化面で良好な関係を築いています。平均年齢は38歳とASEANの中で二番目に高く、GDPはインドネシアについでASEAN第2位を誇ります。

マレーシア

国教であるイスラム教のほかに、仏教、ヒンドゥー教など多様な宗教を信仰していますが、目立った争いなどはなく治安も安定した国です。また、平均年齢も28歳と若く、日本をはじめとするアジア各国の成功に学ぼうと、「ルック・イースト政策」を掲げ、日本への派遣留学や技術研修を盛んに実施しています。2019年、マハティール首相(当時)は「マレーシアを製造業、サービス業におけるASEANのハブとして活用し、輸出拡大も目指してほしい」と日本に対して期待する言葉も述べています。

インドネシア

世界で最も多くの島からなるインドネシアの面積は、東南アジア最大。およそ490の民族が住む多民族国家であり、世界4位の人口を誇ります。また、世界で最もイスラム教徒が多い国ですが、宗教の自由が認められており、イスラム国家ではありません。日本は最大の輸出相手国であり、日本にとってもインドネシアは大切なエネルギー供給国です。ASEAN第1のGDPを誇り、平均年齢も28歳と今後の経済成長に更なる期待が寄せられています。

フィリピン

インドネシアにつぐ群島国家のフィリピンは、ASEAN諸国の中で唯一のキリスト教国です。首都マニラの華やかさ、セブ島などのリゾート地が人気の観光立国で、時差が少なく日本からも訪れやすい国です。フィリピンにとって日本は最大の貿易相手国であると同時に、最大の投資国でもあります。GDPはASEAN第3位、平均年齢は24歳とASEAN諸国の中でラオスについで若い国です。

ベトナム

ベトナムは、55ほどの少数民族からなる多民族国家です。ドイモイ政策で市場経済システムを導入し飛躍的に発展したことで知られ、その経済成長は世界から注目されています。有名な親日的な国でもあり、日本とは、政治・経済・文化面で活発な交流が行われています。GDPはASEAN第4位、平均年齢も30歳と堅調な経済成長を遂げています。

最後に

ASEAN諸国の中でも、コロナ禍の2020年に唯一GDPがプラス成長したベトナムは世界中から注目されている消費市場です。人口増加、経済発展に伴う中間層の増加は今後もベトナムの消費市場が成長することを示しています。

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