ASEAN設立の目的や日本との関係について解説

ASEAN設立の目的や日本との関係について解説

ASEANの正式名称は、Association of Southeast Asian Nations。日本語では東南アジア諸国連合と呼んでいます。
本記事では、この東南アジア地域10カ国の地域協力機構の設立目的、ASEAN経済共同体、現状について解説します。

ASEAN(アセアン)概要

1967年8月タイのバンコクで発足した東南アジア初の地域協力機構が東南アジア諸国連合、通称ASEAN(アセアン)です。
東南アジアの友好、経済の成長促進、社会・文化的発展を目的として設立されました。

発足当時の加盟国は、インドネシア、タイ、マレーシア、シンガポール、フィリピンの5ヶ国でしたが、その後、
ベトナム、ブルネイ、ラオス、ミャンマー、カンボジアが新規に加盟し、現在は10ヶ国で構成されています。
また、インドネシアから独立したアジアで最も若い国、東ティモールの加盟の是非は検討中です。

10ヶ国の政治体制、宗教、経済成長度合いはさまざまですが、加盟国間の平等や相互関係を重視し、それぞれの
国の意志を尊重することにASEANの特徴があるといえるでしょう。とくに、1995年に社会主義国であるベトナム
の加盟を認めたことで組織の性格に変化があったといわれています。

ASEANは常に東南アジア諸国連合としての意見を国際社会に伝えることができ、一つにまとまることで、大国に
挟まれながらも域外大国への交渉力を保つことができるのです。

東南アジアの小さな国にとってASEANに加盟していることは、大国の介入を回避し、さらに自国の利害や主張を
実現できるベストな方法といえます。

 

ASEAN共同体について

当初ASEANは緩やかな協力関係でしたが、1990年代のアジア通貨危機などの政治・経済的な国際情勢を受け、
より関係を深めた地域共同体を構築することになりました。これが2015年に発足したASEAN共同体です。
ASEAN共同体は「経済共同体」(AEC)、「政治安全保障共同体」(APSC)、「社会文化共同体」(ASCC)
によって構成されています。

 

1、経済共同体(AEC)

ASEANに加盟した10ヶ国は一つの経済圏としてまとまることを目指し、2015年にはアセアン経済共同体(AEC)
を発足させました。ASEAN は経済、政治・安全保障、社会・文化という3つの共同体で構成されていますが、
AEC はその中でも基礎となる重要な共同体です。近年はとくに高い経済成長を遂げており、隣接する中国をはじめ、
日本やアメリカなど海外企業からの期待も高くなっています。

10ヶ国の総面積は、449万㎢、総人口は約6億5千万人、GDP(国内総生産)は約2兆9690億ドルのASEAN経済共同体は、
欧州連合”EU”、北米自由貿易協定”NAFTA”、南米南部共同市場”MERCOSUR”と並ぶ経済圏となりました。

ASEAN経済共同体では、ヒト・モノ・サービスの自由化により域内の貿易を促進させ、経済規模の拡大を見込んでいます。
EUのような通貨統合は目指さず、加盟国の主権を優先してサービスや投資などの自由を図ることが目的です。
なお、ASEANでは、ミャンマーなどを除き短期滞在ビザが撤廃されているため、各国間で自由に出入りができます。
短期滞在ビザの撤廃は、とくに観光業などへの好影響が期待されています。

 

2、政治安全保障共同体(APSC)

政治安全保障共同体(APSC)は、各国の政治的協力を強化し、紛争の予防・平和的解決を促進すること、さらには
域外の国の関係強化を目的とし発足されました。現在は「価値と規範を共有する,ルールに基づく共同体」「総合安全保障
のため責任を共有する,結束し,平和で安定し,強靭性がある地域」「ダイナミックで外に向かう地域」などの目標に
基づいた取り組みがなされています。

 

3 、社会文化共同体(ASCC)

経済共同体と比較しその全容はとらえにくいですが、ASCC では主に、人間開発や福祉の向上、環境保全に向けた協力など
が計画されています。主にASEAN諸国の人々が連帯を維持する状態を目指し、活動を行なっています。

主な実施内容としては、
・教育の向上、人材育成などの人間開発
・貧困削減、社会保障、災害管理などの社会福祉の向上
・女性や子ども,移民労働者などの権利の保護など社会正義の確保
・環境の保全

などの取り組みです。これらの計画は2015年までに平均各90%程度達成されており、とくに協力が進んだ分野としては
教育や災害管理が挙げられます。

 

ASEAN(アセアン)と日本の関係


生産拠点としての重要性

消費市場として有望なASEANは、日本にとって中国やアメリカ、EUと同様に重要な貿易相手です。

加えて、人件費の高騰している中国に代わる生産拠点としての期待も高く、ASEANに対し日本企業の
外国直接投資は好調に推移しています。また、複数国展開としてビジネス拡大を図る際の拠点として、
ベトナムは勿論、シンガポールやタイが選ばれやすいことが大きく影響しています(表1)。

日本がASEANに関わる理由の一つとして、ASEANは親日国が多く展開しやすいことも大きな特徴といえるでしょう。

表1、ASEANにおける日系企業の複数国進出の状況

出所:「2016年度日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」(ジェトロ)

 

自由貿易化のための取り組み

貿易や投資の自由化を推進するため、日本は、ベトナム、シンガポール、タイ、インドネシア、フィリピンなどの
国とEPA(経済連携協定)を締結し、さらに日本とASEAN全体の構成国との経済連携協定であるAJCEP
(日・ASEAN包括的経済連携)も発効しています。シェア拡大のため、ASEAN地域への進出を狙っている企業は
非常に多く、ASEAN経済の動向と日系企業に与える影響には今後も注目すべきでしょう。

人口規模の大きさのみならず、経済成長性も高く、さまざまな文化要素が入り混じるASEAN。今後の可能性には
まだ計り知れないものがあります。そんなASEANマーケットで日本企業が勝ち抜いていくには、マーケットの素早い
変化にスピーディーに対応することが求められています。

 

私たちシングラでは、国内とベトナムでの豊富なマーケティングノウハウを生かして、日本とベトナムの架け橋として
ベトナムへの事業展開を支援いたします。ぜひお気軽にご相談ください。